刻羽空也が一日一題を目標にゆるーい感じでお題を消化してました。(過去形)

投げるところに困った物を取り敢えずでぶん投げる。


幼稚園児の暁の話
「お母さん」
「なぁに?」
「これ」(幼稚園の予定が書き込まれたカレンダーを指差す)
「此処?」
「………」(頷く)
「お誕生日会だって」
「…?」
「四月がお誕生日の子をお祝いするのよ」
「………」
「暁のお誕生日は何時?」
「四月の、二」
「うん、だから暁もお祝いして貰えるよ」
「…お誕生日の、お祝い?」
「そう」
「………」
「よかったね」
「………」(興味なし)

「お母さん」
「うん?」
「あのね」(興奮気味)
「どうしたのー」
「お誕生日」
「うん」
「おめでとうって」
「うん」
「聖治が、おめでとうって」
「聖治君が?」
「うん」
「おめでとうって、言ってくれたんだ」
「うん」
「嬉しいね」
「…?」
「暁、よかったね」
「…うん」
「………」(にこにこ)
「お母さん」
「なぁに?」
「おめでとうは、嬉しいの」
「そうよ」
「お誕生日は、嬉しいの」
「だって、みんなにおめでとうって言って貰えたでしょう?」
「…みんな?」
「幼稚園のみんな」
「…みんな」
「おめでとうって言ってくれたの、聖治君だけじゃないでしょう?」
「…?」
「…ええっと」
「…おめでとうは、嬉しい?」
「暁?」
「嬉しい」
「………」
「おめで、とう」
「…大丈夫?」
「…分かんない」
「うーん…」
「…ごめんなさい」
「いいのよ、いいの」
「………」

「お母さん」
「うん、どうしたの?」
「お支度、しないの?」
「お支度?」
「お支度」
「ああ、えっとね、今日は幼稚園お休みだから、お支度しなくていいのよ」
「…お休み」
「お休み」
「………」(首傾げ)
「暁?」
「じゃあ、お布団」(部屋に逆戻り)
「あら」
「?」
「朝ご飯は?」
「…ご飯」
「食べないの?」
「ご飯」(Uターン)
「はいはい」

「お母さん」
「なぁに?」
「カレンダー」
「うん」
「赤い日」
「数字が赤い日?」
「うん」
「うん」
「赤い日は、お休みなの?」
「そうよ」
「…お休み」
「お隣のオレンジの日もお休みね」
「お休み」
「そう」
「赤とオレンジじゃない日は?」
「幼稚園がある日」
「………」
「此処から此処までが、幼稚園がある日。此と此が、お休みの日」
「………」
「分かる?」
「幼稚園がある日、一杯」
「そうね」
「一杯」
「暁は一杯、嬉しいの?」
「…?」
「其れとも、嬉しくないの?」
「………」
「どっちかな」
「…嬉しい」(首傾げ)
「嬉しい?」
「…?」(考え込み)
「あらら」
「………」(更に考え込み)

「お母さん」
「うん?」
「赤い日一杯」
「そうね、お休み一杯」
「………」
「もうゴールデンウィークかぁ…」
「お休み一杯?」
「そうよ」
「………」
「暁は、何処かお出かけしたいところあるの?」
「お出かけ?」
「うん」
「………」
「遊びに行きたいところ」
「…?」
「思い付かない?」
「………」
「…お父さんも忙しいしね」
「………」


「暁!」
「………」(振り返る)
「おはよう!」
「おはよう」
「えへへ」
「?」
「プレゼント!」
「…え」
「おみやげおみやげ」
「…おみやげ?」
「うん」
「…お菓子?」
「うん!」
「ありがとう」
「えへ」
「………」(視線お菓子と言うより下向き)
「聞いて聞いて!」
「なぁに」
「お父さんとね、お母さんとね、お出かけしちゃった!」
「お出かけ?」
「うん!」
「…そっか」(テンション低)
「お花一杯咲いてたしね、ねこちゃんも一杯見たしね、お水も美味しかったしね、えっと、あと…」
「………」(寂しげ)
「…あ」
「?」
「えっと…」
「なぁに」
「暁、えっと、その…」
「…?」
「…暁は、お出かけしたの?」
「ううん」
「…そっか」
「うん」
「…ごめんね」
「?」
「暁、一緒に遊ぼ!」
「うん」
「お日様ぽかぽかだから、お外行こう!」
「うん」(嬉しげ)


「お母さん」
「はぁい?」
「これ…」(カレンダー指さし)
「夏休み?」
「…夏休み?」
「ええっと」(ページ捲り)
「………」
「此の夏休みって書いてあるところが始まりで、其処から此処までが、夏休み」
「…夏休み」
「そう」
「お休みなの?」
「そうよ」
「………」(眉ハの字気味)
「何処か遊びに行きたいね」
「お出かけ?」
「うん、今度はお休み長いから」
「………」
「きっと何処か行けるよ」
「お休み一杯」
「うん」
「………」(俯き)
「…聖治君は何処に行くのかしらね?」
「………」

「暁ー?」
「…?」
「お外、遊びに行かないの?」
「行かない」
「あれー…」
「………」
「折角夏休みなのに」
「お家が好き」
「うーん…」
「…アテナと遊ぶ」
「そう?」
「お庭で遊ぶ」
「…暁」
「お外」
「…そうね」
「………」
「一杯遊んでらっしゃい」
「うん」

「ねぇ、暁?」
「?」
「最近一杯アテナのお散歩行ってるね」
「うん」
「お母さんと一緒にお買い物も行くね」
「うん」
「でもそれ以外にお出かけしないね」
「…お出かけ、一杯してる」
「もう…」
「………」
「そんなにお出かけ嫌いなの?」
「………」
「うーん…」

「あら」
「………」
「暁、お出掛けするの?」
「………」(首を横に振る)
「でもお着替えして玄関で靴はいて待って…あ」
「………」
「此、幼稚園のバックよ?」
「………」(頷く)
「まだ夏休みだから幼稚園お休みよ?」
「………」
「お支度しなくていいのよ?」
「………」(首を横に振る)
「ええっと…」
「………」
「幼稚園、行きたいの?」
「………」(頷く)
「うーん…」
「………」(俯き)
「でも、行っても誰もいないよ?」
「………」(顔を上げる)
「暁?」
「………」(部屋に戻る)

「………」(幼稚園のバックを見詰める)
「…暁」
「………」(振り返らない)
「お休みなんだってば」
「………」
「幼稚園好きだったの?」
「………」(頑なに反応しない)
「暁ー」
「………」
「…もう」

「お母さん」(八月のカレンダーを見詰める)
「なぁに」
「赤くない」
「そうね」
「オレンジじゃない」
「そうね」
「じゃあ幼稚園行かなきゃ」
「でも夏休みなのよ」
「………」
「何回も説明したでしょう?」
「………」
「しょうがないじゃない、お休みなものはお休みなんだから」
「………」
「諦めなさい」
「………」
「諦めて、お外に遊びに行きましょう」
「………」(首を横に振る)
「…はぁ」

「暁」
「………」
「またカレンダー見てるの」
「………」
「此のページ捲るまではずっとお休みなのよ」
「………」
「此処から此処まで、ずーっと」
「………」
「ねぇ、暁?」
「………」
「その間、そうやってずーっとカレンダー見て過ごすの?」
「………」
「暁」
「………」(俯き)
「…暁?」
「…やだ」(涙目)
「あ」
「やだ」
「どうしたの、暁」(慌て)
「やだ」(涙が零れる)
「ええと、ハンカチ…」(大慌て)
「お休み、やだ…」
「暁…」
「夏休みやだ、嫌い、嬉しくない」
「………」
「お休みやだ!」
「…暁」
「やだやだやだ…っ」(大泣き)
「…よしよし」

「暁」
「…?」
「一緒にお出掛けしよう」
「………」(俯き)
「ほら、お支度して」
「…はい」
「ああ、そうそう」
「?」
「濡らしたタオル、ひんやりするでしょ」
「…うん」
「目の回り赤くなってるから、ちょっと冷やそうか」
「…うん」


「お母さん」
「なぁに?」
「何処に行くの」
「其れがねー」
「…?」
「もう着いちゃった」
「?」
「ちょっと待ってね」
「………」
「あ、暁、ピンポン押す?」
「…押す」
「よいしょ」(抱き抱え)
「………」(チャイムを鳴らす)

「いらっしゃい」
「どうも、今日は」
「聖治ー、暁君来たわよー」
「…え」
「ほんと!?」
「まぁ、凄いダッシュ」
「ほんとだ!」
「…聖治」
「あっきら~!」(飛び付き)
「!」
「えへへ、見て見て、背伸びちゃった、日焼けもしちゃった!」
「………」
「暁もちょっと背、伸びたかな?」
「………」
「でも僕の方が大きいもんね~」
「………」
「暁?」
「…聖治」
「うん?」
「聖治」
「うん!」
「………」
「おいでよ、遊ぼ、一緒に遊ぼ!」
「…うん!」


「よしよし、二人とも元気一杯、子供は此でこそ!」
「あの、すみません、突然…」
「いーえぇ」
「ひょっとして暁、ずっと聖治君に会いたかったんじゃないかって、思った物で…」
「正解だったみたいですね」
「はい」
「そうだ、ええと」
「はい?」
「風戸、何さんでしたっけ」
「綾子です」
「じゃあ綾ちゃんだ」
「え」
「うふふ」
「えっと、その、三川、何ちゃんでしたっけ」
「碧ちゃんです」
「はい」
「気軽に遊びに来て下さいね、子供達も喜んでますから」
「お邪魔します」



聖「…ううん…」
暁「………」
碧「あら、起きた?」
聖「おかーさん、何かいい匂いする…」
碧「もう晩ご飯だから起きて起きて、暁君も起こして」
聖「うーん…」
綾「あの、聖治君って味付けどういうのが好みとかあります?」
碧「何事もお砂糖多めで!」
綾「はーい」
聖「…あれ」
碧「うーん?」
聖「暁のお母さんが、晩ご飯作ってるの?」
碧「殆どやって貰っちゃった」
聖「え、じゃあ暁も家で晩ご飯してくの?」
碧「そうよー」
聖「やった、うわ、やった、暁起きて大変大変!」
暁「…ぅ、んん…?」
聖「起きて起きて、晩ご飯一緒だって!」
暁「…え、っと」
聖「晩ご飯、暁も一緒だって!」
暁「…え」
聖「此処で食べていくんだって!」
暁「…お母さん」
綾「本当よ」
聖「えへへ、嬉しいなぁ、嬉しいなぁ…」
暁「…うん」
聖「嬉しい!」
暁「うん」
聖「暁も嬉しい?」
暁「うん!」
聖「えへへ~」
碧「ああそうだ綾ちゃん、見て見て、二人の寝顔撮っちゃった」
綾「何時の間に撮ったのよ」
碧「其れは内緒」
綾「くっついて寝てるから兄弟みたい」
碧「ね」
聖「えー、お写真撮ったの?」
碧「撮っちゃったー」
聖「えー」
碧「其れより聖治も見て見て、お母さん暁ママとお友達になっちゃった!」
綾「なっちゃいました」
聖「…ほんとに!?」
碧「本当本当」
聖「わ、おめでとう、おめでとう!」
暁「…おめでとう?」
聖「おめでとうだよー、だってお友達出来るのは嬉しいことだもん」
暁「…嬉しいことだから、おめでとう」
聖「だって僕も暁と仲良くなれて嬉しいもん、ね?」
暁「…そっか」
聖「うん」
暁「嬉しい、ね」
聖「うん!」





綾「――って事があったなって事を、七月のカレンダー捲ったら思い出しちゃって」
暁「いや、えっと…母さん?」
綾「暁ってばアレがやだって駄々捏ねて泣いたの初めてだったのよ?」
聖「おばさん、そう言う話は、ちょっと…」
綾「全くもう、暁ってば一目惚れだし其れ以外の人眼中になかったし、本っ当に昔から聖治君にベタ惚れなのね~」
聖「あ、や、ちょ、おばさん止めて」
暁「俺からも頼んじゃうって母さん」
綾「あらら」
暁「…母さん、明らかに碧おばさんと仲良くなってからキャラ変わった気がするんだけど」
聖「ごめん、ウチの母さんのはっちゃけ移しちゃって…」
綾「うふふ」
暁「…でもさー」
聖「あ?」
暁「そう、昔の話が出るたびに思うんだけど」
聖「何」
暁「オマエ、昔は可愛かったなって」
聖「お前だって昔は可愛かった、小さくて」
暁「問題其処!?」
聖「オレよりでかくなってんじゃねーよ暁のクセに!」
暁「あ、酷い、オマエ酷いって、すっかり捻くれやがって!」
聖「お前並にねじ曲がった根暗野郎になるくらいなら分かり易く捻くれた方がよっぽど良いと思う」
暁「真顔で言うな、全く否定できない」
綾「二人とも、今日もとっても仲良しでお母さん幸せ」
暁「…なぁ、聖治」
聖「…母に勝る者無し」
暁「…ですよね」
  • 刻羽空也
  • 2017/07/08 (Sat) 14:31:25

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