刻羽空也が一日一題を目標にゆるーい感じでお題を消化してました。(過去形)

投げるところに困った物を取り敢えずでぶん投げる。


およそ9年前に書いたイザシズ
※二本立てポエム


《依存は好意に基づかない》


好きとか嫌いとか、そういう話じゃない。
よく好きの反対は嫌いじゃなく無関心だとか言うけれど。
愛情と憎悪が表裏一体だというのは自分も頷くが。
だから面白いのだとでも高らかに笑っても見せるが。
だが、だからと言って。
好きと嫌いは表裏一体と言い換えてしまうと、どうにもしっくりこない。
自分は彼のことを大好きなのだと言われたら何とも気味が悪い。
愛憎と言われたら寧ろ笑うのに、好きだの嫌いだのとえらく単純な子供地味た言葉に嫌悪感を覚えるのは、つまり自分の感覚が子供だと言うことか。
にしても、愛情はともかく愛着ならあると言ってしまっていいだろうなと一人笑う。
けれど。
好きとか嫌いとか、そういう次元じゃない。
笑う。
笑う。
笑う。
笑うしかない。
笑うしか許されない。
そう、好きだろうが嫌いだろうが、そんな感情には意味がない。
それはあまりにもちっぽけだ。
くだらなくてくだらなくて、虚しいほどで、笑わずにはいられない。
平和島静雄。
もし、彼と出会っていなかったら。
この世界に、彼という存在がいなかったら。
恐らく自分は、今の自分とは違う人間になっていただろう。
まあそれに気が付く人間はいないだろうが。
そんな微々たる違いでしかないのだろうが。
そう思えば、今のこの、他人に見せている顔のなんと道化に満ちたことか。
結局代わり映えしないのなら。
ああ虚しい侘しいなんと悲しいことだろう、肩を竦めてケラケラと笑う。
もしも世界に、彼のような不確定要素と呼ぶべき存在があると知ることが出来なかったのなら。
ああなんと、ああなんて。
歎く、歎く、歎く。

「ねえシズちゃん」

そう、好きとか嫌いとか、そういうんじゃない。
そんなことはどうでもいい。

「君に出会えてよかったよ」

必要なんだ、この世界に。

「君があまりに憎たらしいから、俺は他の愛すべき人間達を愛していられる。さしずめシズちゃんは全人類の身代わり人形ってところかな?」

必要なんだ、俺の生きるこの世界に。

生きていかなければいけないから。
それこそ本当の自殺志願者になれるほど、思い詰められるほど一途にはなれない。
この鼓動が止まればいいのになんて願えないのなら、甘んじて呼吸をし続けていくしかないから。
こんな息苦しい世界で。
こんなつまらない世界で。
こんな、くだらない。

「ねえシズちゃん、考えてもご覧よ。世界にはこんなにも沢山の人間がいる。視界に入るだけだって、擦れ違う人間全てなんてとてもじゃないけど把握仕切れないっていうのに、俺の目の届かないところにも人間はいるのさ。そう沢山だ、とてもとても、とっても沢山!ああなんて楽しいんだろうねぇ、全く素晴らしいよこの世界は!飽きる暇すら与えちゃくれない」

大好きだ、あまりにくだらなくて、楽しむことに全力を注がなければ満足に呼吸すらできないこの世界が。
もしもの、彼がいない世界。
そんなものはへどがでるを通り越して己の吐瀉物で窒息死コースまっしぐらだ。
ああすばらしきこの世界。
好きでもない嫌いでもない、きっとまあどちらでもあるのだろうが。
これは、依存だ。
彼へのこれは、そうだきっと。
けれどもう要らない。
彼のおかげで今の自分の価値観は完成した、世界は完成した。
もう出来上がったのだ、出来てしまった、だからもう要らない。
今更彼が死んだって、彼がいなかったことにはならないのだから。
彼が死んだって、自分は彼を忘れない。
忘れられやしない。
そう、彼に死んでほしいとどんなに願っても、存在否定はできやしない。
彼の存在を否定したらそれは今の自分を否定しているのと変わりないから。
きっぱり自分自身を否定できるほど、強い人間じゃない。
だからもう、もう。
彼への依存が解けることなどありはしないのだから。
もうあとは、素直になってしまえばいい。

「しーずちゃん」
「気持ちわりぃ」
「…死んでよ」
「てめぇがな」

ねえシズちゃん。
大っ嫌い。



――――――――――

《踊ってくださいませんかなんて台詞は似合わないから》


例えばの話。
そこに餓えた鬼、即ち子供がおりました。
子供は目を懲らし耳を澄まし鼻を舌を皮膚をあらゆる感覚を用い己の感性を全てぶち込んで紙で出来たお城を作りました。
けれど糊が乾くまでそのお城には支えが必要でした。
そしてお城をその王座を貫いた一本の、まるで矢でも突き刺さったように雷でも落ちたかのように貫いた柱。
そして時は流れ、一見もうお城を形作る糊は乾いたように見えます。
そろそろ柱を取ってもいいように見えます。
お城を柱が貫いている様はなんとも不格好で、子供はさっさとその柱を取り去ってしまいたいと思っているようです。
さて、此処で一つ問題を。
正確に言うのなら賭けを。
今柱を失って、それでもこの城はそのままそこに在りつづけるか、それとも。
確率はそう変わりないと踏んでいる。
どちらに転んでも構わない。
それよりはやくこの不格好な柱を退かしてくれないか。
王座は俺の物だというのに、これではまるで柱がこの城の主だ。
この城はただ俺一人だけの物だというのに。
見てもみろこの城には王座一つしか椅子はないだろう。
この城は孤独の城で構わない、そうたった一人ぼっちの。
自殺願望?
ああそう、崩れても構わないと俺が言うから。
勘違いしないで欲しいな、俺はただ手段と目的を履き違えた可哀相な子供だよ。
楽しみがないと生きられないから楽しみを探したのに、今となっては楽しむために生きている。
そう、楽しめないなら生きている意味などないのさ。
だから言ってるじゃないか、賭けをしよう。

賭けたものは俺の命、弾くコインは君の命。
火をかければあっさり灰となって燃え尽きるのだろう紙のお城で、どうか俺と遊んでくださいませんか。
  • 刻羽空也
  • 2019/02/21 (Thu) 23:25:37

返信フォーム






プレビュー (投稿前に内容を確認)